衝撃の実話

衝撃の実話!チェンジリング

衝撃の実話

第81回アカデミー賞主演女優賞・撮影賞・美術賞にノミネートされた作品『チェンジリング』(Changeling)。日本で公開されたのは2009年2月20日です。

名優クリント・イーストウッドが監督した『チェンジリング』は1920年代に実際にあったゴードン・ノースコット事件の被害者家族の実話を元に映画化されました。。ゴードン・ノックス事件は1920年代に発生した連続少年誘拐事件です。連続少年誘拐事件の被害者となったシングルマザーの母親役をアンジョリーナ・ジョリーが演じます。アメリカで80年近く前の事件だったこともあり映画『チェンジリング』では関係者全員の名前が実名で出てきます。映画の中ででてくる衝撃的な出来事が、脚本ではなく事実ということに衝撃を受けます。1920年代アメリカで実際に起きていた事実ということを考えると、被害者の母親がたった一人でロスアンゼルス市警という巨大な組織と立ち向かう姿に尊敬の念を感じます。

アンジョリーナ・ジョリーは最初に『チェンジリング』のオファーが来た時に、子どもを失うというストーリーに出演することに難色を示したそうです。しかし被害者の母がロスアンゼルス市警に立ち向かい、子どもへの愛を貫き通す姿に同じ母親として心を動かされ出演することを決めたのではないでしょうか。彼女がひたすら子どもの無事を信じ続けて、猛然と奮闘する姿に心を揺り動かされる作品です。

『チェンジリング』あらすじ

1928年3月。ロスアンゼルス郊外に住んでいる一人のシングルマザーのクリスティン・コリンズ(アンジョリーナ・ジョリー)が息子を小学校へと送り届けます。息子を送り届けたその足で向かったのが電話局です。クリスティンは電話局で働いています。クリスティンは妊娠中に夫が逃げ出してから、彼女がひとりで息子ウォルターズを育ててきました。ウォルターズから「なぜ父親がいないの?」という問いかけに対して「あなたが生まれたときに、いっしょにプレゼントが届いたの」と語り「何が入っていたの?」と尋ねるウォルターズに対して「Responsibility」責任と語り、息子が生まれてからも息子に対して深い愛情と責任を持って育ててきました。

仕事が休みの日の3月10日のことです。息子と映画に出かける約束をしていたクリスティンに会社から電話がかかります。クリスティンは急遽出社することになり、ウォルターをひとり家に残して会社へと向かいます。帰宅するはずの時間を大幅に過ぎて、クリスティンは急いで帰宅しましたが、留守番しているはずのウォルターの姿は既にありませんでした。

家出、それとも誘拐?すぐに警察に連絡をしますが、警察からは「子供の捜索は24時間経たないと出来ない。そのうちすぐに帰ってきますよ」と突っぱねられてしまいます。ウォルターが突然消えた翌日に警察はやってきて、ようやく翌朝から捜査は開始されたましたがウォルターの行方は全く掴めない行方不明の状態は続きクリスティンは眠れない夜を過ごしていきます。

1か月、2か月・・・・と時間だけが経過していきますが、ウォルターの行方不明はそのままで時間だけが経ちました。5ヵ月後の8月に、クリスティンの会社にロス市警のジョーンズ警部(ジェフリー・ドノヴァン)から連絡が入りました。それは「イリノイで息子さんの身柄を保護しました」という連絡です。クリスティンは、取り急ぎ駅まで息子を迎えに行きますが、列車から降り立った子どもはウォルターではなく全くの別人でした。

孤独な闘いクリスティンの中で

クリスティンは「私の子じゃない!!」と断言してジョーンズ警部に訴えますが、警部は応じません。久しぶりの子どもとの対面で混乱しているからだと全く応じません。「今は動揺しているから分からないんです。あれから5か月です。子どもは大人が考える以上のスピードで成長しているので」とクリスティンを無理やり納得させます。クリスティンは子どもが違うと警部に抗議はしますが、受け入れてもらえないので疑問を抱えたままその少年を連れて自宅へ連れて帰ります。

連れて帰った少年をお風呂へ入浴されると、少年の身体をみて割礼をされていることに気がつきます。そしてさらに少年の身長を測ってみると、ウォルターよりも身長が7cmも低かったのです。明らかにこの少年は自分の息子とは違うと確信を持ったクリスティンは、再びジョーンズ警部の元を尋ねまうす。そして少年は自分の子どもではない。と抗議を続け引き続きウォルターを探して欲しいとお願いするのですが、それでもジョーンズ警部は全く受け入れてくれません。

その間にジョーンズ警部は医師を派遣してきました。医師にもウォルターの身長よりも7cm低いことを訴え主張しますが、医師も全く受け付けてくれません。それどころかその医師は、報告書で「クリスティンが育児放棄をしている」と記録して提出するのでした。

少年が自分の息子ではない!といくら主張しても受け入れてもらえず、それどころか育児放棄の報告書まで提出されたクリスティンは納得できません。

マフィアと癒着していたロス市警の不正を暴く活動をしているグスタヴ・ブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)は、クリスティンに対して警察と戦うのであれば協力をすると申し出ます。

クリスティンは少年を歯医者に連れて行って少年の歯列を観察してもらいます。歯科医はウォルターと少年はまったく別人だと断言してその内容を書類に書きだします。ウォルターが通っていた小学校の担任教師も、少年はウォルターではない。と断言します。それをもとにジョーンズ警部に訴えても、それでもジョーンズ警部は動きません。

そこで、遂にクリスティンは記者会見を開き、新聞記者たちに発見された少年が息子のクリスティンではないこと、ロス市警が息子の捜索に手を貸してくれないことを訴えるのでした。

警察は明らかに自己防衛のために動いています。そしてクリスティンの記者会見を知ったジョーンズ警部は、クリスティンを警察に呼んで彼女を錯乱状態だとして病院の精神病棟に無理やり収容してしまう手はずを整え、精神病棟送りにするのでした。

クリスティンが送り込まれた精神病院で、彼女は"コード12"と分類されます。精神病棟で一晩泣き明かした彼女に、ひとりの患者がすべてを教えてくれました。「コード12と呼ばれている患者は、警察を敵に回した連中だ」と。コード12とは患者全員を指さす言葉だったのです。そしてクリスティンと同じように、警察に逆らったために精神病院へ収容された女性がたくさんいるのでした。

食事を終るとクリスティンは担当医に呼び出されます。そして「警察の捜査にミスはなかった」という内容が書かれた書面にサインをすれば、すぐにでも退院させると言うのです。病院側は明らかに警察から意向を受けて、クリスティンに病名を付けていたのです。そしてクリスティンは薬物を無理やり飲まされたり、精神的にも肉体的にもひどい扱いを受けます。必死に抵抗する彼女に力を貸してくれたのは、おしてくれたさきほどの女性でした。それでも、治療という名目で拷問がつづきますが、病棟で知り合った女性と出会ったことをきっかけにして、強い心を持ち始めていたクリスティンは、頑として「警察の操作にミスはなかった」という書面に断固としてサインを拒みます。

ノースコット事件

クリスティンが病棟で拷問を受けている頃、ある事件が発覚していました。事件が発覚したのは、1人の少年クラーク・ノースコットというカナダからの不法移民の身柄を確保したことから発覚しました。

身柄を確保されたことに、少年は脅えていました。そして、重大な恐るべき事実をしゃべり始めたのです。「従兄のゴードンに無理やり強制されて、20人の少年たちの殺害の手伝いをさせられた」という告白でした。少年は従兄のゴードン・スコットは誘拐した少年たちを自宅で殺害している。といいます。

その話を聞かされた刑事は、最近行方不明になった少年たちの顔写真を数十枚を提示します。そして少年が取り上げた1枚の写真が、ウォルター・コリンズの写真でした。当然、刑事は本署のジョーンズ警部に捜査方針を問い合わせをしますが、ジョーンズ警部の指示は無視しろと言う指示でした。

事件の甚大さはロス市警を震撼させる出来事ですが、クラーク・ノースコットの強制送還の日がやってきます。無視しろという指示をうけた刑事は職務に対しては忠実でした。そして半信半疑ではありますが、少年を供述の現場へ連れて行きます。そして少年と従兄が遺体を埋めたという場所を少年に掘り返させます。そしてそこからは人骨が出てきたのでした。

精神病院に強制入院させられたクリスティンは、病院に入れられてから1週間経過していました。担当医師は相変わらず警察に従うことが書かれている書類にサインをするように強制しますが、クリスティンは拒否し続けます。そんな中に、弁護士同伴で牧師が駆けつけてきました。そしてなかなか退院させない精神病院にクリスティンを退院させるように迫り、なんとかクリスティンを退院させることなりました。退院したクリスティンは新聞の号外でウォルターのことを知り、その場に崩れ落ちます。

全米でゴードン・ノースコット事件は、稀代の猟奇殺人事件へと発展していました。そして、無理やり精神病院へ強制的に令状も取らずにクリスティンを精神病院に強制入院させて閉じ込めたことも社会問題化します。クリステインに牧師は「これ以上、警察をつつくな。危険だ」と。しかし落ち着きを取り戻した彼女は「私には、もう失うものはない!」と警察と闘うことを主張します。

裁判:ノースコットと警察

ブリーグレブ牧師が中心となって、牧師の友人弁護士の助けをかり市民たちの声も味方につけてクリスティンは警察の腐敗を弾劾します。その一方で、カナダで身柄を確保されたノースコットの裁判も始まります。警察側は、裁判と市議会の聴聞会の日を同じ日に設定することでなんとか自分たちに都合の良いようにしようと姑息な手段をとりました。聴聞会のその場所からクリスティンを牧師は連れ出して、ノースコットの裁判へ傍聴へ行きます。

裁判の中でノースコットは否認をしています。

聴聞会では「子どもの取り違えを気が付いた段階で間違いを認めていれば、ウォルターは生きていたかもしれない。令状なしに警察の独断でコリンズ夫人を精神病院に送り込んだ!」と糾弾者が問い詰めていきますが、警察は自分たちの責任を認めようとはしません。糾弾者たちの問い詰めに、傍聴席からは拍手が起きていきます。

クリスティンの証言で、精神病院の"コード12"の患者が解放されます。聴聞会の結果、ジョーンズ警部は永久停職となり、ロス市警本部長は解職。市長は出馬を断念というクリスティン側の圧勝で終わります。

「ウォルターを殺してない!」と訴えるノースコットに対して、裁判で陪審員は有罪を評決します。そして裁判官は判決を読み上げ「2年の懲役刑を科す。その後直ちに死刑を執行するものとする」という判決が下されるのでした。

ちなみにウォルターではないのにウォルターだと名乗った少年は、映画スターに会いたいというのが理由で家出をした少年でした。そして少年は実の母親に引き取られることになりました。

ノースコットへ刑の執行

裁判でノースコットはウォルターを殺していないと主張してました。その言葉にクリスティは一縷の希望を抱いてウォルターは生きていると信じて探し続けていました。2年後の1930年に死刑の執行が迫る中、ゴードンから電報が届きました。それはクリスティが刑務所に来れば全てを話すという内容の電報でした。

クリスティは刑務所へわざわざ出向いていきますが、ノースコットは真実を語ることなく死刑執行の日を迎えそのまま処刑台へと上っていき、クリスティも立会い死刑は執行されました。

事件から7年後:1935年

ウォルターが突然消えてから7年経っても、クリスティンはいまだに息子の生存を信じていました。そしてクリスマス・イブの夜に警察から連絡が入ります。誘拐されていた少年の中の1人が警察に保護されたのです。しかし残念なことに、ウォルターではなく別の少年でした。保護された少年は当時のことが語られました。

「当時4人が閉じ込められていました。ウォルター・コリンズという子どももその中に間違いなくいました。その名前はどうしても忘れられない名前だからはっきり覚えています。誘拐されてから脱出するときに、ウォルターに助けられたんです。一緒に彼とは逃げ出しました。バラバラに逃げたからどうなったのかは分からないけど・・彼がぼくを助けてくれなければ、間違いなくぼくは殺されていました。逃げられたけど、怖くて名乗りだせませんでした。でも母さんたちに会いたくて・・・」と保護された経緯を語りました。

クリスティンは誘拐されていた場所から逃げ出して、ネバダで隠れながら生きていた少年の言葉を聞き両親へ逢いたいという思いで戻ってきた話を聞いて、お世話になった刑事にお礼の言葉を述べます。そして「夜に3人の子どもが逃げだそうとしました。ひとりが逃げ出せたのだとしたら、もうひとりいえ2人も逃げ出せたかもしれません。息子は本当のことを言うことで自分自身や私に危害があるのでは。とこわがっていて、どこかに隠れたままなのかもしれません。あの子の話から、私の胸からなくなっていたものが生まれました。」刑事が「それはなんですか?」と尋ねると「HOPE、希望です。」とクリスティンは答えその後、生涯をかけて息子ウォルターを探し続けていきました。

衝撃の実話!チェンジリング